Vol.7 CLINIC PLANNING 小児科編

小児科

クリニックの新規開業は科目ごとに特徴があり、
立地選定、資金計画など様々なシーンごとに特色があります。

今回は小児科での開業の実例を踏まえご紹介させて頂きます。

モデルケース

医師プロフィール:40代前半
選定立地:郊外エリア型商業施設。スーパー、学習塾なども入居。駐車場台数が多い。
開業形態:医療モール(商業施設内)
規模:40坪(約132.3㎡)
賃料:坪単価1.8万円(共益費込、税別)
保証金:賃料の10か月分

商業施設内でのクリニック開業は、通常の初期投資に加え、建物側設備工事(B工事)が発生し、初期費用が高額となる場合があります。

また、患者様に施設内での待ち時間を有効に使っていただくため、順番呼び出しシステムを活用することも有効です。

戸建て住宅やファミリー向けマンションなどがあり、子育て世帯が多い、または増加中のエリアを選定することが基本戦略となります。学校や保育園などが近い立地であれば、口コミなどで集患につながるケースがあります。

同一診療科目はもちろんのこと、患者層の重なる可能性がある耳鼻科、アレルギー科の近隣は避ける必要があります。子連れの患者様が来院しやすいよう駐輪スペースが十分に確保でき、駐車場も確保できる物件が望ましいです。

今回のような郊外型は車社会のため、利用可能な駐車場が必須となります。また、施設自体に集客力のある複合型商業施設内での開業は、利用者層が患者層と重なる部分もあるため集患のメリットがあります。

約40坪でのレイアウトサンプルです。クリニック内での二次感染を起こさないよう、「健診や予防接種を受けに来る患者様」と「発熱・感染症疑いのある患者様」を分ける完全セパレート対応を目指したクリニックレイアウトになります。

また、乳幼児期は荷物も多く移動が大変である為、院内はベビーカーで移動できるような入口サイズ、通路幅、診察室や処置室・トイレの広さを確保しました。

院内は曲線基調の受付カウンターや壁面を採用し、安全性と柔らかな雰囲気を演出しています。


ポイント

待合室の分離】

不特定多数の人が行き交う商業施設内の医療モールなので、完全に「発熱・感染エリア」(待合室ー2)を分けてあります。

会計処理も健診や予防接種とは分けて対応できるような動線を作ります。

多目的WC・授乳室】

商業施設内には共用多目的トイレや授乳室もありますが、クリニックから離れていたり混んだりする事を考慮してクリニック内の多目的トイレにはおむつ交換台、待合室には簡易授乳スペースが必須だと考えます。

ベビーカー配慮】

商業施設ではベビーカー利用の方が多いため、ベビーカーのまま移動できるよう広めの動線とスペースを確保する。

プラスワンポイント

商業施設内の医療モール開業では「通常の小児科」と「ショッピングモール特有の動き」を両方考える必要があります。モールならではの注意点としては・・・

  • 発熱・感染エリアの取り方(待機エリアを健診や予防接種と分けて配置)
  • スタッフ動線は裏動線を設けて患者様の動線と完全に分ける

これらに注意すると理想的なレイアウトになると思います。

院内での検査は、血算(CBC)・CRP検査で急性期疾患の診断を行い、免疫測定装置でアレルギー検査を行うのが一般的な傾向になっています。

レントゲン検査はスペースと重要度の観点から導入するケースは少なくなってきており、逆に超音波検査は近年小型タイプを導入される事が増えてきています。


ポイント

電子カルテの選定もさることながら、予約システムとWEB問診をいかに活用するかを重要視する傾向にあります。

ホームページにて集患→ネット予約→WEB問診 と使いやすく簡便にし、待ち時間短縮と業務効率化に注力し選定するのがポイントです。小児科においては、自己負担ゼロの関係でセミセルフレジを導入するケースが他診療科に比べ少なくなっています。

クリニック開業を志す先生方にとって、事業計画の策定は、その後の経営を左右する極めて重要な羅針盤となります。しかし、インターネット上や書籍等には多くの情報があふれているものの、先生が目指す医療の形や立地条件等によって、「正解」は大きく異なります。

ここで示す数値は、特定の前提条件(立地、規模、診療方針等)に基づき、多数の事例から導き出した現実的なモデルではありますが、全てのケースに当てはまるものではありません。先生方ご自身のビジョンを具体的な数値に落とし込み、オーダーメイドの事業計画を策定するための「思考のフレームワーク」として、ご利用いただくものであることを御了承いただきたいと思います。

4-1. 投資計画

本モデルケースでは商業施設内医療モールの約40坪・坪単価1.8万円という条件を設定しましたが、これはあくまでも標準的な一例です。

実際のクリニック開業においては、立地の希少性や建物のグレード、フロア階数など様々な要因によって、必要な面積は30坪~60坪以上、坪単価も1万円台から3万円を超えるケースまで大きな幅があります。先生方の診療コンセプトと資金計画に合わせた最適な物件選定が重要です。

4–2. 収支計画

今回は、小児科の保険診療単価は4000円、自費診療単価は診療内容・予防接種の内容によりますが、7000円としています。

商業施設ですので、立ち上がりが早いことを踏まえて、開業初月は保険診療で1日15人、自費診療で1日6人の計21人、1年後は、保険診療で1日40人、自費診療で1日15人の計55人の来院を想定しています(表2の1日平均患者数は保険診療の患者数になります)。

スタッフは、医師1名(院長)、看護師(常勤1名・パート2名採用)が常時2名、受付事務(常勤1名・パート2名採用)が常時2名の想定です。

商業施設での開業は、集客力の高さという大きなメリットがあります。日常的に多くの来院があるため、クリニック独自の広告を出さなくても、一定の認知が得られるほか、駐車場、駐輪場などを用意する必要が無く、患者様の通院ハードルも低い点が魅力です。

また、施設の管理体制が整っている為、クリニック周辺の清掃や、院内警備などの間接費用が抑えられるケースが多いです。反面、工事に制約があるなど、診療時間・休診日で商業施設側から制限される可能性がある点は注意する必要があります。

4–3. 損益分岐点

損益分岐点とは

費用と収益が等しくなり、損失がゼロになる売上高(または患者数)のこと。

この数値を把握することは、クリニック経営における最低限の目標設定に他なりません。

今回のケースでは、1日に保険・自費合わせて1日43人診れば、事業として損益が分岐します。院長の生活費(手取り月70万)や、借入返済を考慮すると、1日60名の来院患者数が必要です。

商業施設内開業の最大の武器は、自前で集患せずとも「目の前に潜在の患者様がいる」ことです。1日43名の損益分岐点を早期に通過点とし、1日あたり60名の来院を定着させることで、固定費を相対的に圧縮し、利益率を最大化できます。

また、60名以上の患者様を快適に診るために、予約システム、WEB問診、自動精算機の導入も想定しています。


商業施設で開業の場合、まずは初期投資(B工事)の価格交渉にこだわる必要があります。B工事の施工業者はオーナー指定業者の為、提示された金額から減額の余地がある場合があります。

信頼できる開業支援業者、内装業者と協力し100万円でも200万円でも交渉していただきたいと思います。初期投資が圧縮できれば、月々の返済は軽減され、損益分岐の人数を数名引き下げることができます。

また、WEB問診や、予約システムを徹底活用することで、患者様の満足度を下げずに診察人数を増やし、スタッフの手間を極限まで減らす必要があります。「患者様が増えても残業代や追加採用が増えない仕組み」を構築することで、繁忙期の増収がそのまま利益に直結する高収益体質へと進化させる必要があります。

4-4. 事業計画 総括

郊外型モールという立地は、本来数年かかる認知獲得を数ヶ月に短縮します。この「立ち上がりの速さ」こそが最大のメリットです。早期に資金繰りを安定させ、その余力をスタッフ教育やさらなるIT化に再投資することで、近隣競合が追随できない「地域一番」の地位を瞬時に確立できます。

患者回転率の向上は、診察を急ぐことではなく、「非診察時間の徹底排除」で実現可能です。今回は、WEB問診と予約システムを電子カルテと完全連動させ、受付・会計のボトルネックを解消しています。小児医療費助成制度等により保険診療の窓口負担が生じないケースが多い小児科ですが、予防接種では、自己負担も発生します。

1人当たりの対応時間はわずかですが、そのわずかな時間の積み上げも徹底的に排除しましょう。約40坪という限られた空間では、待合室の混雑がそのままキャパシティの限界に直結します。患者の滞在時間を「診察と処置」に凝縮し、会計待ちの空白時間をゼロに近づけることが必要です。

商業施設内開業という「圧倒的な集患力」を原動力にする、極めて戦略的で可能性に満ちたケースです。商業施設ならではの認知スピードを活かし、立ち上がりから確実な収益を確保できるかどうかが、最大のポイントと言えます。

さらなる成功への鍵は、親子のストレスを徹底的に排除し、WEB予約や自動精算機による「待ち時間ゼロ」の実現を目指すことです。地域内で圧倒的な支持を得るための強力な武器にしましょう。また、約40坪という限られた空間を「安心感のある」完全分離動線で設計できれば、競合他院には真似できない強い信頼の証となります。

初期投資の精査とITによる徹底した効率化は継続して必要になりますが、実現の暁には、損益分岐点を早期に突破し、持続可能でゆとりある経営基盤を構築することができます。地域に愛され、経営的にも盤石なクリニックの実現に向け、自信を持って第一歩を踏み出しましょう。

ユヤマでは物件選定から開業の支援を行っております。
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協力企業

参考レイアウトサンプル 株式会社ノア
病院・クリニック・介護医療施設など医療関連施設を中心に、企画・設計・施工・施工管理まで一気通貫で担う総合建築設計事務所です。医療機関に求められる「安全性・感染対策・動線・設備・法規」を踏まえつつ、老若男女に受け入れられる清潔感と温かみのあるデザインを両立。限られた予算・工期の中でも品質とコストを最適化し、伴走型で支援しております。

医療機器、システム選定 株式会社スズケン
スズケングループは、事業領域を「健康創造」と定め、医療用医薬品の卸売だけではなく、医薬品の研究・開発・製造、医薬品メーカー支援、保険薬局、そして介護に至るまで、医療と健康に関わる事業を総合的に展開しています。開業支援では、立地調査から事業計画、医療機器選定、資金調達、スタッフ採用、開業後の経営フォローまで一貫してサポート。地域に選ばれるクリニックづくりを、医療現場を熟知したスズケンが力強くご支援します。

事業計画 ペンデル税理士法人
「Your Success is our Business」の理念のもと、事業の発展から大切な資産の円滑な承継まで、お客様の未来をデザインする専門家集団です。私たちは税務・会計を核としながら、グループの総合力を結集し、法人・個人を問わず、あらゆる課題の解決に尽力します。中でも医業部では、クリニック経営に精通した専門チームが、医療機関の成長ステージに応じて、長年培った知見を結集した独自の先進的なソリューションを提供します。ドクターが安心して理想の医療を追求できる、盤石な経営基盤づくりに貢献できるよう総合的な支援体制を構築しています。